うとした。途切れ途切れな切《せつ》ない祈りの声が涙にしめって確かに……確かに聞こえて来る。葉子は眉《まゆ》を寄せて注意力を集注しながら、木村がほんとうにどう葉子を思っているかをはっきり見窮めようとしたが、どうしても思い浮かべてみる事ができなかった。
 事務長がまた新聞を折り返す音を立てた。
 葉子ははっ[#「はっ」に傍点]として淀《よど》みにささえられた木の葉がまた流れ始めたように、すらすらと木村の所作を想像した。それがだんだん岡の上に移って行った。哀れな岡! 岡もまだ寝ないでいるだろう。木村なのか岡なのかいつまでもいつまでも寝ないで火の消えかかったストーブの前にうずくまっているのは……ふけるままにしみ込む寒さはそっと床を伝わって足の先からはい上がって来る。男はそれにも気が付かぬふうで椅子《いす》の上にうなだれている。すべての人は眠っている時に、木村の葉子も事務長に抱かれて安々と眠っている時に……。
 ここまで想像して来ると小説に読みふけっていた人が、ほっとため息をしてばたん[#「ばたん」に傍点]と書物をふせるように、葉子も何とはなく深いため息をしてはっきり[#「はっきり」に傍点]と事
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