てはいなかった。葉子が来たならばと金の上にも心の上にもあて[#「あて」に傍点]にしていたのがみごとにはずれてしまって、葉子が帰るにつけては、なけなしの所からまたまたなんとかしなければならないはめ[#「はめ」に傍点]に立った木村は、二三日のうちに、ぬか喜びも一時の間で、孤独と冬とに囲まれなければならなかったのだ。
 葉子は木村が結局事務長にすがり寄って来るほかに道のない事を察していた。
 木村ははたして事務長を葉子の部屋《へや》に呼び寄せてもらった。事務長はすぐやって来たが、服なども仕事着のままで何かよほどせわしそうに見えた。木村はまあといって倉地に椅子《いす》を与えて、きょうはいつものすげない態度に似ず、折り入っていろいろと葉子の身の上を頼んだ。事務長は始めの忙《せわ》しそうだった様子に引きかえて、どっしり[#「どっしり」に傍点]と腰を据えて正面から例の大きく木村を見やりながら、親身《しんみ》に耳を傾けた。木村の様子のほうがかえってそわそわしくながめられた。
 木村は大きな紙入れを取り出して、五十ドルの切手を葉子に手渡しした。
 「何もかも御承知だから倉地さんの前でいうほうが世話なしだ
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