恐れながらもどこまでもついて行こうとした。どんな事があっても自分がその中心になっていて、先方《むこう》をひき付けてやろう。自分をはぐらかすような事はしまいと始終張り切ってばかりいたこれまでの心持ちと、この時わくがごとく持ち上がって来た心持ちとは比べものにならなかった。あらん限りの重荷を洗いざらい思いきりよく投げすててしまって、身も心も何か大きな力に任しきるその快さ心安さは葉子をすっかり夢心地《ゆめごこち》にした。そんな心持ちの相違を比べて見る事さえできないくらいだった。葉子は子供らしい期待に目を輝かして岡の帰って来るのを待っていた。
 「だめですよ。床の中にいて戸も明けてくれずに、寝言《ねごと》みたいな事をいってるんですもの」
 といいながら岡は当惑顔で葉子のそばに現われた。
 「あなたこそだめね。ようござんすわ、わたしが自分で行って見てやるから」
 葉子にはそこにいる岡さえなかった。少し怪訝《けげん》そうに葉子のいつになくそわそわした様子を見守る青年をそこに捨ておいたまま葉子は険しく細い階子段《はしごだん》を降りた。
 事務長の部屋《へや》は機関室と狭い暗い廊下一つを隔てた所にあって
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