顔を赤くしながら葉子のそばに身を寄せた。葉子は黙ってほほえみながらその手を取って引き寄せて、互いに小さな声で軽い親しい会話を取りかわし始めた。
 と、突然岡は大きな事でも思い出した様子で、葉子の手をふりほどきながら、
 「倉地さんがね、きょうあなたにぜひ願いたい用があるっていってましたよ」
 といった。葉子は、
 「そう……」
 とごく軽く受けるつもりだったが、それが思わず息気《いき》苦しいほどの調子になっているのに気がついた。
 「なんでしょう、わたしになんぞ用って」
 「なんだかわたしちっとも知りませんが、話をしてごらんなさい。あんなに見えているけれども親切な人ですよ」
 「まだあなただまされていらっしやるのね。あんな高慢ちきな乱暴な人わたしきらいですわ。……でも先方《むこう》で会いたいというのなら会ってあげてもいいから、ここにいらっしゃいって、あなた今すぐいらしって呼んで来てくださいましな。会いたいなら会いたいようにするがようござんすわ」
 葉子は実際激しい言葉になっていた。
 「まだ寝ていますよ」
 「いいから構わないから起こしておやりになればよござんすわ」
 岡は自分に親しい
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