子の顔を孔《あな》のあくほどにらみつけて、聞くにたえない雑言《ぞうごん》を高々とののしって、自分の群れを笑わした。しかし葉子は死にかけた子にかしずく母のように、そんな事には目もくれずに老人のそばに引き添って、臥安《ねやす》いように寝床を取りなおしてやったり、枕《まくら》をあてがってやったりして、なおもその場を去らなかった。そんなむさ苦しいきたない所にいて老人がほったらかしておか黷驍フを見ると、葉子はなんという事なしに涙があとからあとから流れてたまらなかった。葉子はそこを出て無理に船医の興録をそこに引っぱって来た。そして権威を持った人のように水夫長にはっきりしたさしずをして、始めて安心して悠々《ゆうゆう》とその部屋を出た。葉子の顔には自分のした事に対して子供のような喜びの色が浮かんでいた。水夫たちは暗い中にもそれを見のがさなかったと見える。葉子が出て行く時には一人《ひとり》として葉子に雑言《ぞうごん》をなげつけるものがいなかった。それから水夫らはだれいうとなしに葉子の事を「姉御《あねご》姉御」と呼んでうわさするようになった。その時の事を水夫長は葉子に感謝したのだ。
 葉子はしんみにいろい
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