度を保っていた。遠慮会釈なくそんな所で葉子になれ親しむのは子供たちだった。まっ白なモスリンの着物を着て赤い大きなリボンを装った少女たちや、水兵服で身軽に装った少年たちは葉子の周囲に花輪のように集まった。葉子がそういう人たちをかたみがわり[#「かたみがわり」に傍点]に抱いたりかかえたりして、お伽話《とぎばなし》などして聞かせている様子は、船中の見ものだった。どうかするとサルンの人たちは自分らの間の話題などは捨てておいてこの可憐《かれん》な光景をうっとり[#「うっとり」に傍点]見やっているような事もあった。
 ただ一つこれらの群れからは全く没交渉な一団があった。それは事務長を中心にした三四人の群れだった。いつでも部屋の一|隅《ぐう》の小さな卓を囲んで、その卓の上にはウイスキー用の小さなコップと水とが備えられていた。いちばんいい香《にお》いの煙草《たばこ》の煙もそこから漂って来た。彼らは何かひそひそと語り合っては、時々|傍若無人《ぼうじゃくぶじん》な高い笑い声を立てた。そうかと思うとじっと田川の群れの会話に耳を傾けていて、遠くのほうから突然皮肉の茶々を入れる事もあった。だれいうとなく人々はそ
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