はうるさそうに頭の中にある手のようなもので無性《むしょう》に払いのけようと試みたがむだだった。皮肉な横目をつかって青味を帯びた田川夫人の顔が、かき乱された水の中を、小さな泡《あわ》が逃げてでも行くように、ふらふらとゆらめきながら上のほうに遠ざかって行った。まずよかったと思うと、事務長の insolent な目つきが低い調子の伴音となって、じっ[#「じっ」に傍点]と動かない中にも力ある震動をしながら、葉子の眼睛《ひとみ》の奥を網膜まで見とおすほどぎゅっ[#「ぎゅっ」に傍点]と見すえていた。「なんで事務長や田川夫人なんぞがこんなに自分をわずらわすだろう。憎らしい。なんの因縁《いんねん》で……」葉子は自分をこう卑しみながらも、男の目を迎え慣れた媚《こ》びの色を知らず知らず上《うわ》まぶたに集めて、それに応じようとする途端、日に向かって目を閉じた時に綾《あや》をなして乱れ飛ぶあの不思議な種々な色の光体、それに似たものが繚乱《りょうらん》として心を取り囲んだ。星はゆるいテンポでゆらりゆらりと静かにおどっている。「おーい、おい、おい、おーい」……葉子は思わずかっ[#「かっ」に傍点]と腹を立てた。そ
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