何うも女ってものは老者《としより》の再生《うまれかわり》だぜ。若死したものが生れ代ると男になって、老耄が生れ代ると業で女になるんだ。あり相で居て、色気と決断《おもいきり》は全然《からっきし》無しよ、あるものは慾気ばかりだ。私は思わずほほ笑ませられた。ヤコフ・イリイッチを見ると彼は大真面目である。
又親ってものがお前不思議だってえのは、娘を持つと矢っ張りそんな気にならあ。己れにした処がまあカチヤには何よりべらべらしたものを着せて、頬っぺたの肉が好い色になるものでも食わせて、通りすがりの奴等が何処の御新造だろう位の事を云って振り向く様にしてくれりゃ、宿六はちっとやそっとへし曲って居ても構わ無えと思う様になるんだ。
それでもイフヒムとカチヤが水入らずになれ合って居た間は、己れだって口を出すがものは無え、黙って居たのよ。すると不図《ふいと》娘の奴が妙に鬱ぎ出しやがった。鬱ぐもおかしい、そう仰山なんじゃ無えが、何かこう頭の中で円い玉でもぐるぐる廻して見て居る様な面付をして居やあがる。変だなと思ってる中に、一週間もすると、奴の身の周りが追々綺麗になるんだ。晩飯でも食って出懸ける所を見ると、お前
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