、大変な暴風《しけ》でな。」
「矢張《やっぱ》り南東風《くだり》だったね?」
「あ、大南東風《おおくだり》だった。」
「えい。」と為吉は熱心になって、「その時も矢張《やっぱ》り白山が見えていただろうね?」
「そんなことは覚えていないけれど、恐ろしい大浪《おおなみ》が立って、浜の石垣《いしがき》がみんな壊《こわ》れてしもうた。」
「よう、そんな時に助けに行けたね、――死んだものがおったかね?」
「何でも十四五人乗りの大きな帆前船だったが、二人ばかりどうしても行方《ゆくえ》が分らなかった。何しろお前、あの小《こ》が崎《さき》の端《はし》の暗礁へ乗り上げたので、――それで村中の漁夫《りょうし》がその大暴風《おおしけ》の中に船を下《おろ》して助けに行ったのだが、あんな恐ろしいことは俺《おら》ァ覚えてからなかった。」
為吉は眼を光らして聞いていました。父は為吉の問に応じて、その難破船の乗組員を救助した時の壮烈な、そして物凄《ものすご》い光景を思い出し話して聞かせました。その時為吉の父親は、二十七八の血気盛りの勇敢な漁夫《りょうし》で、ある漁船の船頭をしていたのでした。そして県庁から、人の生命を
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