っとしました。荷物を置いて槍へ登りますと人の声がするので、よく見ると槍を三人の人が下りつつあるのです。すぐエホーと声をかけながら元気を出して登りますと、彼の登山者は槍肩の小屋へ入ってしまいました。槍は雪が少しありますが凍っていないので難なく午前十一時頂上へ登ることができました。北の方や常念山脈は雲に巻かれて見えませんが、南の方は晴れていて穂高連峰の雄大なのには驚きました。乗鞍、御獄や白山、笠も少し見えました。しかもこんな雪の降りつつある日本アルプスを見ることができ、ほんとにきた甲斐がありました。槍ヶ岳の祠は新しいのができていて中に名刺入の箱がありました。槍を下って肩の小屋へ行きました。先の登山者は法政大学の角田様ともう一人案内が一人の三人でした。お腹がぺこぺこなので、早速飯を恵んで下さいと頼み、大変御馳走になりお陰でやっと元気になりました。それから殺生小屋に帰り荷物を持って大急ぎで下り、大槍の小屋も過ぎ槍沢の小屋で靴をかえ、一ノ俣の小屋を通ってどんどん下りました。上高地の紅葉は少し遅いようですが、それでも綺麗でしたし、唐沢の屏風岩も雄大に見えました。徳本峠へ登る頃はまた空腹になりました
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