名ノ滝までお子様と二人で散歩においでになったのです。私は先生と一緒に称名川《しょうみょうがわ》を遡って行きました。弥陀ヶ原側はところどころ崩れて大絶壁をなしています。雑穀谷の吊橋を渡ると道から少し離れていますが、小屋があります。ここで昼食をしました。称名ノ滝の少し手前にも、また小屋があります。ここで先生とお別れして川へ下って吊橋を渡り弥陀ヶ原へまっすぐ登ります。なかなか急峻です。しかしこの途中で称名ノ滝を見るのはとても雄大です。登り切って、見覚えのある広い道を急ぎます。もはや霧が巻いていて遠望はききませんが道ばたの草、漆の木等は綺麗に紅葉しています。今度は獅子ヶ鼻岩の方へ廻ってみました。少し下ると川があります。大きな苺がたくさんなっていますが急ぐので心を残しながら川を渡って登ります。鉄の鎖の釣ってあるところが二カ所ほどありました。獅子の鼻といえばいえぬこともないような珍な岩です。鏡石の小屋あたりまでくると、霧が晴れだして大日岳が谷を距てて大きく見えるようになりました。どんどん登って行くと前方に四人の登山者が見えましたのでエホーと声をかけますと返事がありました。大急ぎできてみると、四高の
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