坂避難小屋に泊る。気持のいい小屋だ。炭俵がたくさんあり、その中に入っていると温かい。アルコールは便利だ。コッヘルにて餅を炊く。とてもうまい。また干柿もいい。この附近積雪量五尺くらい。

[#地から1字上げ]十日 雪 七・〇〇発 〇・〇〇弘法小屋
 雪が降っている。しかし風がないので幸いだ。弘法附近は積雪七尺くらい、南側の下の窓より入る。一月より寒いのか炊事場の水は表面が凍っていた。例の炉辺に寝る。午後七時頃よりときどき風の音を聞く。

[#地から1字上げ]十一日 雪 滞在
 何もすることがないので入り口の戸を開けて道を掘ってみた。すぐ埋ってしまうので中止。夜中より吹雪となり物凄く風が唸っている。

[#地から1字上げ]十二日 吹雪 滞在
 朝になっても吹雪は止まず、いつまでつづくことかとちょっと心配になる。一月福松が口癖に雪の立山、雪の立山と言っていたが、ほんとにその感じを深くする。しかしさすがの吹雪も午後五時頃よりおさまり、その夜は寂莫。静かな雪が落ちているのみ。

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十三日 晴 八・四〇発 一・〇〇室堂 二・一五一ノ越 三・〇五立山頂上 四・一〇室堂 六・一
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