した。川を下って川井で河内の方へ他の川を遡って行きます。気持の悪い雲が一一〇〇メートル以上を包んでしまい、もしや雨ではないかと不安です。乗鞍は麓から一〇〇〇メートルの線くらいまで草原で道がなくとも楽に登れます。ここに防火線が設けられてあります。この上も植林してありますから割合楽です。次から次へと低い雲が山を廻って走り去って行きます。一二〇〇メートルくらいからスズ竹の中へ入って登って行きます。ところどころ残雪と大きな木があります。オオ雲が晴れました。三室山の頂きが見えます。午前十時半、俚称ショー台の頂上へ登りました。国有林の杭が打ってあります。そこは実に海抜一三五八メートル兵庫県第二の高峰乗鞍の絶頂であります。そして三角点はそのまま山の高さを保っています。オオ見えるではありませんか、氷ノ山が、真白い槍が、鷲羽と白馬が、扇ノ山―鳥取の群山が、大渓谷、大森林、大竹森がーとても雄大な眺望です。私は杭を打込み万歳を三唱しました。そしてここから縦走する予定でした海抜一二四四・二メートルの俚称三国ヶ山は大森林やスズ竹の突破がなかなか苦しいのであきらめて下山することにしました。乗鞍よ、再度相見ることは
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