ある兵庫鷲羽等は飛んで行けそうに近く見え、これらのあいだを越して兵庫大天井すなわち鉢伏山が岡のような顔を見せているし、今きた高原も眼下に白馬と鷲羽から流れてきています。兵庫槍も大きな尾根を東西に引いて雄大に見えます。もちろん扇ノ山は近いので一層大きく雄大な裾野を引いて西へ沈んでいるのは、なかなか深山的です。立山を下って扇ノ山に登りました。ここは鳥取の人が炭焼きにきて少し木を切っていて楽に歩けます。頂上辺で炭焼きの人に逢い、鳥取県からはこの山へ道があると聞きました。扇ノ山の三角点は木が茂っているのと汽車の時間が気になるので、急いだため見つかりませんでした。そしてスズ竹の中を東方へ下って川に出ました。この川も以前の川も溶岩の中を流れています。但馬のスキー場|神鍋山《かんなべやま》と同じ頃か、もっと古い火山でしょう。裾野を見ても火山であったことを思わせます。川を下って行くと五時頃村の人に逢いました。この人は川にミノすなわちレインコートの材料にする草を取りにきていたのです。そして私が、この道のない山に登り、よく出てこられたと感心していました。ここからはすぐ道がありました。村へ下ってもとの道を浜
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