のである。
いつもブナ坂を登り切ると、悪場から開放された安心からレモン・ティ等を沸かしてしばらく休む。今年は新道ができていて美女平を通らず尾根の右端を巻いて小谷にいで、それを渡ったりなどしてしばらくは道もわかったが、すぐ道を失いあとは藪をくぐりながらほぼ旧道に沿って登って行った。ここは杉の植林がしてあり、迷えば左の方へ巻く方が楽である。
ここまでくると天候は全く崩れて予想通り雪が降り出した。霧のためにブナ林もぼんやり霞んで遠くは見えない。ブナ坂は約一一四〇メートルから一一八五メートルくらいの広い大きな坂でよくわかる。この坂は道より少し右寄りに登った方が楽だ。これを登り切ればすぐ目の前にブナの小屋が大きく現われる。時間はまだ早かったが、雪が降り出したのでここへ泊ることにして内へ入る。小屋は二階建ての頑丈なもので、どんな大雪のときにも埋って入れぬということはないであろう。寝具、食糧、燃料等も備えてあり、五月にはたいてい番人がいるから安心だ。
この日はお客が僕一人なので儲からないと思って番人は山を下ってしまった。天候はますます悪化して夕方から風が吹き出し、夜中には雪が雨に変って物凄い暴
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