ら見舞いに帰ろうと思います。休暇を少しもらえませんか」といってお願いに出た。ところが「君の父は山の中で病気をしているのではないかね」と上の人が皮肉をいうのです。実際そういわれても仕方がない。どうもない親を病気だといってまで山へ行くほどの不孝者ではないにしても、山へ行くときにはあっさり休暇を使いながら、父の病気見舞いには休暇をもらうことを惜しんでいた私なんだから。しかしなんといわれても見舞いに帰らねばならない。一人しかいない親なんだし、末子でわがままな私のことを一番心配している父なんだもの。
わが家へ帰ってみると、一時大変悪かった父もだいぶ恢復していたので大いに安心した。父は生来無口で思っていることの半分もいえぬ性なのだが、私の顔を見るとすぐ、登山は危険だから止めてほしい。そして早く身をかためてくれといった。母がいたならおまえを今まで独りで置きはしなかったであろうに。自分はどれほどそれを心配していることか、自分の病気はだんだん重くなって行くばかりで、もう全快の見込みがない。そう長くは生きておられない自分だ、なんとか安心させてくれないものか、そればかりが心残りなのだがといわれる。私はそれ
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