ながら起きていること。ひどい吹雪でなければ、眠るより歩いた方がよい(非常にゆっくりと、あるいは居眠りをしながら)。腰をおろして休むときには眠り込まぬようにコッヘル等を利用すること。以上のように終始コッヘルを利用することが一番よいと思う。もちろん疲労や睡眠不足を完全に補う薬があれば一番よいのだが、残念なことに僕はそれを知らない。
[#地から1字上げ](一九三三・一)
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冬富士単独行

 細野へ行く山友達とともに、いつもの急行で神戸を出発した。この汽車は御殿場へ行く僕にはあまり有難くなかったが、友達の友情に引きずられたのだった。だいたい僕は岩登りも、スキーも下手なのでパーティの一員としては喜ばれず、やむなく一人で山へ行くのであって、別にむずかしいイデオロギーに立脚した単独登攀を好んでいるわけではない。だから汽車の中など、少々足手まといになっても、お互いの生命まで関係しないときは山友達もともにいることを許してくれる。
 名古屋では乗換に間があったので、荷物をプラットホームにおいたまま駅前の通りをぶらりと歩いてやがて時間がきたので構内へ入ってみると、さっきおいた荷物が見えない。
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