を過すのだという。
十三日はあまりひどい吹雪ではなかったが終日つづいて、一ノ俣まで行くには差支えないと思ったが、常さんや発電所の水の取入口の人が遊びにくるので、ついのびてしまった。炬燵にあたって爺さんに山の話をしてもらっていると、山にきたことを忘れてしまいそうだ。
上高地――一ノ俣
早朝星が出ていたので、爺さんに頼んで早く出発した。暗かったため、六百山の裾でちょっと迷ったし、明神池に行く橋を渡って、池の奥の方へ入ってしまい、一本橋を渡ったりした。それでも河原に出てからは風で雪が締っていて思ったより楽であった。横尾の出合から一ノ俣の小屋までは地図よりだいぶ長いようだが、ちょっと高廻りをしただけで、徒歩は一度もしなかったし、岩場のようなところも歩かなかった。四月にはこの徒歩と岩場とで二月の二倍の時間がかかった。一ノ俣の小屋は炊事場の戸が開いていたのでそこから入る。積雪量は四尺くらいで思ったより少ない。水は近いし、炊事道具は置いてあり、蒲団もたくさんあるし、雪に埋れて入れぬということもないらしいので冬期の使用小屋としては完全なように思う。スキーを練習するにはちょっと不便だが、
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