日本人も影響を受けて好んだ。青磁は鐵料の還元焔達成である、胎土に鐵分があり且つ厚手である、厚手の青磁にいゝものがあるのは當時の燒成の條件が厚手でないと失敗したからで、へたにまごつくと怪しげなものをつかませられる。即ち青磁の胎土に注意しないと假面を被つた胎土があつて、日本で出來、支那から逆輸入するものなしと限らない。
 日本でいふ分類の名稱に依れば砧手といふのが貴ばれる。淡青い釉で胎土は極めて堅い、土といふより石といふ感じである。宋代から元、明の頃燒かれた南方支那のもので、多く宋代のものとされてゐる。極めていゝ手である。形、文樣、いろ/\むづかしい見方がある。
 天龍寺手といふのは砧手より幾らか黄色味を帶びた緑色で、明代のものではあるまいか、といはれてゐる。七官青磁といふのは天龍寺手よりもキメが荒いやうな感じのするもので、透明度はあるが青味が少し玄《くろ》味がかつてゐる、釉面に氷裂がある。
 青磁のうちでは何といつても砧手であるが、その砧手も香爐にしろ花入にしろ形などやかましい條件があるが茲に省く。
 元代の均窯、紫がゝつた釉の上に火色が出てゐるのが高價にもてはやされてゐる。これは宋代からあるやうだが元均窯といふ名で知れてゐる。これも美くしいもので寶玉のやうな感じがする。

     〔繪高麗〕

 日本でいふ繪高麗、實は支那磁州窯の白釉に鐵砂で文樣を描いたもの、それを稱してゐる。宋代に出來た繪高麗は形もいゝし文樣も濶達で、第一白釉の其の白――乳白といふ字を使つていゝのか、こつくり[#「こつくり」に傍点]した白で實にいゝ。その白を生地として現はれた文樣が黒や茶で、その黒も極めて氣品のある黒色である。文樣の暢達自由なこと、古今その比を見ずといつても過言でないと思ふ。
 青磁の時、言ひ忘れたが宋代の高臺は、特にいゝ形をしてゐる。この影響は日本の瀬戸系の古いところに見ることが出來るが、宋代の高臺だけみてゐても一種の亢奮を覺える。
 こゝには繪高麗に就ていつたが宋代には各種各樣の陶を燒いてゐる。白、黒、柿、緑。釉の外赤繪までやつてゐる。宋赤繪の高雅なことは人の知るところ、乳白釉の上に赤や緑で牡丹文などを描いてゐるのを見かけるが、滋味津々たるもの、但しキヅものでも買はないと非常に高價なものである。たゞ繪高麗風の磁州系統のものは、近頃出土品が多くなつたので、割合に安價に求むること
前へ 次へ
全25ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小野 賢一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング