、そうしちゃいられないの、まだほかへ廻らなきゃならないから……」とお光は身支度しかけたが、「あの、こないだの写真は空《あ》いてて?」
「持ってくかい?」
「え、あれはほかでちょいと借りたんだから」
五
お光の俥は霊岸島からさらに中洲《なかず》へ廻って、中洲は例のお仙親子の住居を訪れるので、一昨日《おととい》媼さんがお光を訪ねた時の話では、明日の夕方か、明後日の午後にと言ったその午後がもう四時すぎ、昨日もいたずらに待惚《まちぼ》け食うし、今日もどうやら当てにならないらしく思われたので。
「今まで来ないところを見ると、今日も来ないんだろう、どうも一昨日行った時のお光さんの様子が――そりゃ病人を抱えていちゃ、人のことなんぞ身にも人らなかろうけれど――この前家へ来た時の気込みとはまるで違ってしまって、何だか話のあんばいがよそよそしかったもの」と娘を対手に媼さんが愚痴っているところへ、俥の音がして、ちょうどお光が来たのであった。
親子は裁縫の師匠をしているので、つい先方《さきかた》弟子の娘たちが帰った後の、断布片《たちぎれ》や糸屑がまだ座敷に散らかっているのを手早く片寄せて、と
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