いたはるべきなり。
 また、日の晝にかゞやき、月の夜を照すは、男の外を司り、女の内を治むるに似たり。男には、男の分あり。女には、女の分あり。めゝしきは男の分にあらず、をゝしきも女の分にあらぬなり。伊邪那岐命、伊邪那美命と天の御柱をめぐりてみあひませしときに、伊邪那美命まづ、あなにやし愛男《えをとこ》をとのりたまひて、くみどに興してうみたまへる御子のふさはしからざりしも、たゞごとにはあらざりけり。呉牛月に喘ぐも、日と同じき熱さなるにあらず。月は、ぬば玉の夜、清風そよぐ時にあらはれてこそ人のあはれみも深かるべきに、夕日沈まなくにまだき主じ顏にも出でたらむには、うせなんものは、其光のみにはあらざらむ。女もまた、つゆさしいづることなく、よろづ夫に從ひてぞ、妻たるものの道はたつべかりける。[#地から1字上げ](明治三十二年)



底本:「桂月全集 第一卷 美文韻文」興文社内桂月全集刊行會
   1922(大正11)年5月28日発行
入力:H.YAM
校正:門田裕志、小林繁雄
2009年1月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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