三里塚の櫻
大町桂月
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)我孫子《あびこ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)よく/\の事なる
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夜光命の手には四合入の瓢箪、裸男の手には三合入の瓢箪、誰の目にも其れと知らるゝ花見と洒落たり。
大塚驛より日暮里驛までは電車、日暮里驛にて水戸行の汽車を待合はす。同じく電車を出でて、同じく待合はす一人の囚人、看守に引かれて、プラツトホームの一方に孤立す。誰も之に近づくを避く。中には、『泥棒々々』とさゝやく者もあり。夜光命は先年電車事件の際、東京市民の爲に起ち、兇徒嘯集罪に問はれて、獄に下されしことありける身也。この語を聞きつけて、『世人は囚人を見れば、直ちに泥棒なりと思ふこそ情けなけれ』とて、同情に堪へざるさま也。なほ語を次ぎて、『巣鴨監獄より小菅監獄に移さるゝものなるべし』と云ひしが、果して北千住驛に下りぬ。小菅
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