めにつけられた、恐ろしい詭計《トリック》なんですよ。真犯人は、誰だかまだ判らないが、兎に角、あの秋森家の双生児《ふたご》は、決して真犯人ではないね!」
 そしてアパートを出ながら、驚いている雄太郎君には構わずに、急に憂鬱になりながら、
「ところが、署では、僕の意見など、てんで問題にされないですよ……証人はあるし、証拠は挙がっているし、それになによりも悪いことには、その後取調べの結果、あの双生児《ふたご》の二人と殺された家政婦との間に、醜関係のあった事がばれ[#「ばれ」に傍点]たんです。一寸驚いたですね。殺された女が、報酬を受けてそんな関係を持っていたのか、それとも、女自身の物好きな慾情から結ばれたものか、いずれにしても、その醜関係が有力な犯罪の動機にされたんです。そこへもって来て、ほら、昨晩のあれでしょう。全く腐っちまうね……だが僕は、こんなところで行詰りたくない」
 やがて秋森家の門前へつくと、蜂須賀巡査はポケットから大きな巻尺を取り出し、雄太郎君に手伝わして、昨晩のあの石塀の奇蹟に就いての最も正確な測量を始めた。けれどもいくら試みても、ポストの処から、被害者の倒れていた地点は、緩や
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