し》に、二十貫の主任の巨躯が、そっちへガウンと[#「ガウンと」はママ]ぶつかっていった。
「怪我人」は直ぐに捕えられた。手錠を嵌《はめ》られると、不貞腐《ふてくさ》れてその場へベタンと坐り込み、まるで夢でも見たように、妙に浮かぬ顔をして眼をパチパチやり出した。
松永博士は、腰を揉みながら立上ると、片手でズボンの塵《ちり》を払い払い、
「私は、格闘したのは、これが始めてです」
司法主任は、とうとう堪りかねて、
「いったい、こ、これァ、どうしたと云うんです?」
すると博士は「怪我人」の方を見ながら、
「ふン。トボケてるね。……ほんとにトボケてるのか、わざとトボケてるのか、これから実験して見ましょう」
そう云って「怪我人」の前へ屈み込むと、眼だけ覗いている繃帯頭の顔を、ジーッと睨みつけた。
「怪我人」が再びもがき始めた。
「主任さん。しっかり捕まえていて下さい」
そう云って博士が、「怪我人」の頭へサッと両手を差伸べると、相手は俄然、死物狂いで暴れだした。主任は、ムキになって押えつける。とうとう二人は力余って立ってしまった。博士も続いて立上ると、容赦なく頭の繃帯を解きはじめた。白い長
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