危険な代物で、急ぎますので……」
すると博士は苦笑しながら、
「難問ですな。しかし、どうもそれは、その患者の一人一人に就いて細かに研究して見なくては判りませんよ。一般にあの連中は、思索も感情も低いんですが、しかし低いながらも色々程度があって、その一人一人には、それぞれ勝手な色彩の理窟があるんです。で、率直に私の意見を申しますと、この場合問題は、何処へ誰がどんな風に隠れたかと云うことよりも、院長殺害が三人の共犯であるか、それとも一人の犯行であるか、と云う点にかかっていると思います。もし一人の犯行だったなら、その犯人は一寸六ヶ敷いが、少くとも残りの二人だけは、今にきっと、興奮が去って腹でも空いたなら、その勝手な隠れ場所からノソノソと出て来ますよ。ナニ興奮さえ去ってしまえば危険はありますまい。が、しかし、これが共犯だと……」
博士はそう云って椅子へ掛け直ると、急に熱を帯びた口調で後を続けた。
「……共犯だと、一寸困るんです」
「と云いますと?」
思わず司法主任が乗り出した。
「つまり一人の犯行だった場合に、その犯人だけが一寸無事に出て来にくいと同じ理由で、三人の安否が気遣われるんですよ
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