は捨て兼ねたような口調で、技師へ訊ねるのであった。
「つまり丸山技師と工手と、それから峯吉を殺した男は、浅川監督だったんだね?」
 技師が黙って頷くと、
「じゃア一番あとから殺された峯吉は、それまで何をしていたんだ」
「峯吉は一番さきにやられたんです」
「一番さき?」
「そうです。恐らくあの水呑場で屠られたんでしょう。そして峯吉の屍体を、ひとまず側《そば》の穴倉へでも投げ込んだ監督は、それから、あの採炭場《キリハ》へ火をつけたんです」
「なんだって、火をつけた?」
 係長は思わず訊き返した。
「そうですよ。あなたは、あれがただの過失だなんて思ったら大間違いです。レールの上へ峯吉の鶴嘴を転がして置いて、闇の中で女を抱きとめ、夫婦の習慣と女の安全燈《ランプ》を利用して、炭塵に点火したんです。あれは実際陰険きわまるやり口ですよ。ああして置けば、あとで監督局の調査があった時にも、発火の責任は、自分のところへは来ませんからね」
「しかし、何故また、あの採炭場《キリハ》に火をつけたりしたんだ」
「それですよ」と技師は次第に声を高めながら云った。
「さっきも云いましたように、それはあの採炭場《キリハ
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