気狂い機関車
大阪圭吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)内木《うちき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)吹|捲《まく》り
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
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一
日本犯罪研究会発会式の席上で、数日前に偶然にも懇意になったM警察署の内木《うちき》司法主任から、不思議な殺人事件の急電を受けて冷い旅舎に真夜中過ぎの夢を破られた青山喬介と私は、クレバネットのレイン・コートに身を包んで烈しい風を真面《まとも》に受けながら、線路伝いに殺人現場のW停車場へ向って速足に歩き続けていた。
沍《いて》て泣き喚く様な吹雪の夜の事だ。
雪はやんでいたが、まだ身を切る様な烈風が吹|捲《まく》り、底深く荒れ果てた一面の闇を透して遠く海も時化《しけ》ているらしく、此処から三|哩《マイル》程南方にある廃港の防波堤に間断なく打揚る跳波の響が、風の悲鳴にコキ混って、粉雪の積った線路の上を飛ぶ様に歩
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