来る様に約束してくれました。するとどうでしょう。その大変キキメのある神様は哀れな妾のねがいをお聞き下さって、日ヨウ日毎に貴男にお眼にかかれる様にして下さいました。ああその頃の妾は、なんと言うしあわせ者でしたでしょう。毎日毎日唄を唄ったり、父とユカイに話をしたり……。
でも、それはホンのつかのまの事で、この前の日ヨウ日には、もう貴男はおいでになりませんでした。そして何事があったのか父はもうバチが当るからオガンをかけるのはイヤだと言いだして、だから今夜も花だけ買って早く帰って来てしまいました。そしておさえ切れなくなった妾は、とうとう父とみにくい口あらそいを始めたのでご座います。
そしてああ恋しいオサセン様。
とうとう妾は、恰度手に持っていた棺板に穴をあけるヨツメ・キリで、あやまって父を殺してしまったのでご座います。
妾は、もう生きているノゾミをなくしてしまいました。妾は、この手紙を抱いて、貴男のお手にかかって母のいる国へ行きます。妾の家のお店に、妾がこの手紙をかいてから、急いでこしらえた花環がご座います。どうぞその花環を、哀れな妾のために汽車へ吊してやって下さい。
三月十七日夜
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