ひく度に、妾の家へ花環を買いに来られました。なんと言う美しいお心でしょう。
でもああお懐しいオサセン様。
妾は始めて貴男をお店で見たその時から、貴男がとてもとても大好きになってしまって、ホンの少しの間でも貴男をわすれる事が出来なくなってしまったのでございます。間もなく父は、妾の気持に気づきました。そしてもうその頃では、夢中で妾を大事にしていてくれましたので、時たま貴男が花環を買いに来て下さると、父は出来るだけ手間をとって貴男の花環をこしらえる様にさえしてくれました。
でも恋しいオサセン様。
妾はみにくい体を持っておりますので、貴男のお側《そば》へそれ以上に近づく事の出来ないのをだんだん不平に思う様になり、そして日ましに気が短かくなって我ままになり、一年に二、三度位しか花環を買いに来て下さらない貴男のおすがたを見るために、いくたび父を門口に立たせた事でしょう。でも毎日毎日奥の間の障子のかげから顔だけ出して、貴男の来られるのをいつまでも待ち続けている妾を見兼ねたのか、とうとう父は恰度いまからひと月程前、B町へ毎シュウ草花を買いに行く度に、なんでも大変キキメのある神様へオガンをかけて
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