帰り着いた二人は、機関庫の事務室を根拠地にして、あの冒険で獲得した妙な手掛りに対する研究を始めたんです。
最初の日は、助役は一日中落着いて室内で例の干菓子を相手にあれやこれやと考え廻していた様でしたが、二日目にはとうとう外出して調べ始めました。そして夕方に帰って来て仕出しの料理で晩飯を終えると、早速吉岡ともう一人の調査員を捕えて、こんな事を言ったんです。
「君達、明朝でいいから一寸B町まで行ってくれ給え。外《ほか》でもないんだが……ま、とにかく一応説明しよう」そう言って例の干菓子を二人の前に並べながら、「僕は今までかかって調べた結果、やっとこの煎餅の正体が判ったよ。この奇妙な子供の玩具の小さな風車みたいな、如何にも不味《まず》そうな煎餅は、普通に食用に供するものではなく、干菓子の中でも一番下等な焼物の一種で、所謂|飾《かざり》菓子と言う奴だ。そしてこの地方では、しかも一般にこの菓子を『貼《はり》菓子』と呼んで……ほら、見た事があるだろう?……葬儀用専門の飾菓子になってるんだ。ところで、この煎餅の表面の、後から糊で貼り着けたらしい小さな小豆を砕いた様な木の実だが、色々調べた結果、学名は
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