かかわらず、金廻りは割によくて、つまり内福なんですね……暮し向きは、なかなか派手だってんですよ……
なんでも菱沼さんは、一度なぞ女将の留守を狙って、お客に化けて「つぼ半」へ上ったそうですよ……それで、女中をとらえて、それとなく調べてみたんだそうですが、この福田きぬってのは、むろんその店の経営者なんですが、これにその、よくあるやつですが「時どき来られる旦那様」ってのがやっぱりあるんですよ。それで、
「商売は不景気でも、女将さんは儲けるそうだね?」
って訊くと、まるでちゃあーんと仕込まれた九官鳥みたいな調子で、
「そりゃア旦那様が、競馬で儲けて下さるんでしょう?……」
ってその女中が云うんだそうです。
――成る程、これで旦那も女将も、競馬が好きだってことは判る……だがしかし、旦那が儲けるのか、女将が儲けるのか、そんなことはあて[#「あて」に傍点]になるもンか!
菱沼さんは、そう思いながら引挙げたそうですが、しかしこの程度のことが判っただけでは、まだまだまるで調べのラチはあきません。
そうこうするうちに、一方、次回公判の期日が目の前に迫って来ます……さアそうなると、菱沼さんは、ひ
前へ
次へ
全31ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大阪 圭吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング