著作権の問題
伊丹万作

 社会の各層に民主化の動きが活溌になつてくると同時に、映画界もようやく長夜の眠りから覚めて――というとまだ体裁がよいが、実はいやおうなしにたたき起された形で、まだ眠そうな眼をぼんやりと見開きながらあくびばかりくりかえしている状態である。
 しかし、いつまでもそんなことではしようがない。早く顔でも洗つてはつきり眼を覚ましてもらいたいものだ。
 さて、眼が覚めたら諸君の周囲にうずたかく積まれたままになつている無数の問題を手当り次第に一つ一つ片づけて行つてもらわねばならぬ。中でも早速取り上げてもらわねばならぬ重要な問題の一つに著作権に関する懸案がある。ここでは、この問題に対する私見を述べてみたいと思う。
 従来の日本の法律がはなはだ非民主的であつたことは、我々の国体が支配階級の利益のみを唯一の目的として形成し、維持されてきたことの当然の結果であるが、その中でも、社会救済政策、および文化保護政策の貧困なることは、これを欧米の三、四流国に比較してもなおかつ全然けたちがいでお話しにならない程度である。
 法律によつて著作権を保護し、文化人の生活を擁護することは文化政策の重
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