しまされたとも考えられる。
 さもあらばあれ、すべては終つてしまつた。
「恥ずかしい、もう娑婆のことはいわんといてえな」と、どつかの雲の上で山中が顎を撫でてつらがつている声が聞こえるからもうこれくらいでよす。私の粗野な文章はあるいは死者に対する礼を欠くところがあつたかもしれない。しかしかかる駄筆を弄したのも一にそれによつて山中を偲ぶよすがともなろうかと思つたからである。(十月十八日)[#地から2字上げ](『シナリオ』昭和十三年十一月臨時増刊・山中貞雄追悼号。原題「人間山中」)



底本:「新装版 伊丹万作全集2」筑摩書房
   1961(昭和36)年8月20日初版発行
   1982(昭和57)年6月25日3版発行
初出:「シナリオ 昭和十三年十一月臨時増刊・山中貞雄追悼号」
   1938(昭和13)年11月
入力:鈴木厚司
校正:土屋隆
2007年7月25日作成
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