戦争中止を望む
伊丹万作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)覗《うかが》う
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(例)ボルネオ[#「ボルネオ」に傍点]
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現在の日本は政治、軍事、生産ともに行き当りばったりであり、万事が無為無策の一語に尽きる。
我々国民は、政府が勝利に対する強力なる意志と、周到なる計画性とその実行力とを示してくれるならばいかなる困苦にも堪え得るものであるが、現実においてあらゆる事態がその無計画無能力を暴露しているにもかかわらずただ口頭のみにおいて空疎な強がりを宣伝し、不敗を呼号して国民を盲目的に引きずって行こうとする現状にはもはや愛想が尽きている。
政府は二言目には国民の戦意をうんぬんするが、いままでのごとく敗けつづけ、しかもさらに将来に何の希望をも繋ぎ得ない戦局を見せつけられ、加うるに低劣無慙なる茶番政治を見せつけられ、なおそのうえに腐敗の極ほとんど崩壊の前夜ともいうべき官庁行政を見せつけられ、なおかつ戦意を失わないものがあればそれは馬鹿か気違いである。我々はもはや日本の能力の底まで知ることができた。もうた
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