演技指導論草案
伊丹万作
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)抽《ひ》き出す
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)巧言令色|鮮《すく》ないかな仁
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+它」、第3水準1−14−88]
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○演技指導という言葉はわずかにこの仕事の一面を表出したにすぎない。この仕事の真相は指導でもなく、監督でもなく、化育でもなく、叱正でもない。最も感じの似通った言葉をさがせば啓発であろうが、これではまだ少し冷たい。
仕事中我々は意識して俳優に何かをつけ加えることもあるが、この仕事の本質的な部分はつけ加えることではなく、抽《ひ》き出すために費される手続きである。
○俳優から彼の内包せる能力を抽き出すためには必ず多少の努力を要するものであるが、抽き出そうとする能力があまりにも深部にかくされており、俳優自身もその存在を確信しないような場合には我々の仕事は著しく引き伸ばされ、仕事の形式は訓練という言葉に近づいてくる。
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