その次の像法の最初の五百年は読誦多聞《どくじゅたもん》の時代であります。教学の時代であります。仏典を研究し仏教の理論を研究して安心を得ようとしたのであります。瞑想の国インドから組織の国、理論の国、支那に来たのはこの像法の初め、教学時代の初めなのです。インドで雑然と説かれた万巻のお経を、支那人の大陸的な根気によって何回も何回も読みこなして、それに一つの体系を与えました。その最高の仕事をしたのが天台大師であります。天台大師はこの教学の時代に生まれた人です。天台大師が立てた仏教の組織は、現在でも多くの宗派の間で余り大きな異存はないのです。
 その次の像法の後の五百年は多造塔寺《たぞうとうじ》の時代、即ちお寺をたくさん造った時代、つまり立派なお寺を建て、すばらしい仏像を本尊とし、名香を薫じ、それに綺麗な声でお経を読む。そういう仏教芸術の力によって満足を得て行こうとした時代であります。この時代になると仏教は実行の国日本に入って来ました。奈良朝・平安朝初期の優れた仏教芸術は、この時に生まれたのであります。
 次の五百年、即ち末法最初の五百年は闘諍《とうじょう》時代であります。この時代になると
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