です。
 ところが十九世紀の末から既に大英帝国の鼎《かなえ》の軽重は問われつつあった。殊にドイツが大海軍の建設をはじめただけでなく、三B政策によって陸路ベルリンからバグダッド、エジプトの方に進んで行こうとするに至って、英国は制海権のみによってはドイツを屈伏させることが怪しくなって来たのです。それが第一次欧州大戦の根本原因であります。幸いにドイツをやっつけました。数百年前、世界政策に乗り出して以来、スペイン、ポルトガル、オランダを破り、次いでナポレオンを中心とするフランスに打ち克って、一世紀の間、世界の覇者となっていた英国は、最後にドイツ民族との決勝戦を迎えたのであります。
 英国は第一次欧州戦争の勝利により、欧州諸国家の争覇戦に於ける全勝の名誉を獲得しました。しかしこの名誉を得たときが実は、おしまいであったのです。まあ、やれやれと思ったときに東洋の一角では日本が相当なものになってしまった。それから合衆国が新大陸に威張っている。もう今日は英帝国の領土は日本やアメリカの自己抑制のおかげで保持しているのです。英国自身の実力によって保持しているのではありません。
 カナダをはじめ南北アメリカの
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