家と、鉄の如き意志に依り完全にしかも深き感激の下に統一せられ、総力を極度に合理的に集中運用せる全体主義国との対立であって、断じて相匹敵する戦争力の争いではない。即ち時代が決戦戦争となったのでなく、両方の力の著しき差があの歴史上無比の輝かしき決戦戦争を遂行せしめたのである。
特にこの際我が国民に深き反省を要求するのは、自由主義国家と全体主義国家の戦争準備に対する能力の驚嘆すべき差である。老大富裕国英仏が、戦後の疲れなお医《いや》し切れなかった貧乏国ドイツに対し、ナチス政権確立後僅々数年でかくの如き劣勢に陥ったのである。この事は満州事変後我が国が極東作戦準備につきソ連との間に充分経験した事である。満州事変頃は両国の戦争力相伯仲していたが、僅かに数年のうちに彼我戦力の差に隔りを見た事がその後の東亜不安の根本原因である。
速やかに我らは強力なる統制の下に世界無比の急速度をもって我らの戦争力を向上せしめねばならぬ。
今日フランスに対しては輝かしき決戦戦争を完遂したドイツも、海を隔てた英国に対しては殲滅戦略の続行が出来なくなり持久戦争になる公算が依然極めて大きい。ドイツが英国に対し殲滅戦略、
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