ノ線の北端をベルギー国境に託して自ら安心し、迂回し得る陣地であった事である。いわゆるマジノ延長線は紙上計画に止まり大体有事の日、工事に取りかかる考えであったが、開戦後は労働力の不足等の関係で大して工事を施されていなかった。またマジノ線に連接してベルギーがリエージュを主体としてマジノ線に準じた築城を完成する約束であったが、事実は大して工事が行なわれていなかった。
ドイツ軍は実にこの虚をついたわけである。運動戦となるや独軍の極めて優れた空軍と機械化兵団が連合軍の心胆を奪って大胆無比の作戦をなし遂げ得た。
あの極めて劣勢なフィンランドが長時日良く優秀装備のソ軍の猛攻を支えた事は今日でもいかに防禦力の大であるかを示している。今度の作戦でもフランデル方面に於て敵の正面に衝突した独軍の攻撃はなかなか簡単には成功しなかったらしいのである。空軍の大進歩、戦車の発達も充分準備し決心して戦う敵線の突破は至難である事を示している。
第一次欧州大戦では仏、白の戦闘意志は英国のそれに劣らぬものであったが、今回は余程事情を異にしていたらしい。フランスの頽廃的気分、支配階級の「滅公奉私」の卑しむべき行為はアン
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