いでマース川の大障害を突破して西進、特にアルデンヌ地方に前進した部隊は仏軍の意表に出でて五月十日既にセダン附近に於てマースを渡河し、マジノの延長線を突破したのである。
[#底本223頁上に地図あり]
シュリーフェン以来独軍の主力は右翼にあるものと定まっていたのに、今日はアルデンヌの錯雑地を経て一挙北部フランスに突入した。
奇襲的効果は甚大であった。セダンの破壊口からドイツ軍は有力な機械化兵団を先頭として突入し、一九一八年三月攻勢にルーデンドルフが考えたようにエーヌ、オアーズ、ソンム等の河や運河を利用して左側背の掩護を確実にしながら主力は一路西進、たちまちアブヴィルに達した。同地では仏軍の一部が悠悠錬兵場で訓練中であったとの事である。いかに独軍の進撃が神速であったかを物語っている。
かくてフランデルとアルトアにあった英白軍および仏の有力部隊は瞬く間に包囲せられ、五月二十二日頃にはその運命が決定した。独軍の包囲圏は刻々縮小せられ、形勢非なるを見てとった英軍は匆々《そうそう》本国への退却を開始した。この情況を見たベルギー皇帝は五月二十八日無条件で独軍に降伏した。
形勢は更に急転、英仏
前へ
次へ
全319ページ中230ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石原 莞爾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング