に専制をその指導精神としたのに対し、散兵戦術は各兵、各部隊に十分な自由を与え、その自主的活動を奨励する自由主義の戦術であります。しかるに面式の防禦をしている敵を攻撃するに各兵、各部隊の自由にまかせて置いては大きな混乱に陥るから、指揮官の明確な統制が必要となりました。面式防禦をするのには、一貫した方針に基づく統制が必要であります。
即ち今日の戦術の指導精神は統制であります。しかし横隊戦術のように強権をもって各兵の自由意志を押えて盲従させるものとは根本に於て相違し、各部隊、各兵の自主的、積極的、独断的活動を可能にするために明確な目標を指示し、混雑と重複を避けるに必要な統制を加えるのであります。自由を抑制するための統制ではなく、自由活動を助長するためであると申すべきです。
右のような新戦術は第一次欧州大戦中に自然に発生し、戦後は特にソ連の積極的研究が大きな進歩の動機となりました。欧州大戦の犠牲をまぬがれた日本は一番遅れて新戦術を採用し、今日、熱心にその研究訓練に邁進しております。
また第一次欧州大戦中に、戦争持久の原因は西洋人の精神力の薄弱に基づくもので大和魂をもってせば即戦即決が可能
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