確保した不撓不屈の精神、これが今日のドイツの勃興に与えた力は極めて偉大である。ほとんど全欧州を向うに廻して行なった長年月にわたる持久戦争は戦争研究者のため絶好の手本である。仕事の外見は大きくないが、大王こそ持久戦争指導の最大名手であり、七年戦争は正しく軍神の神技と云うべきである。
1、第一シュレージエン戦争(一七四〇―四二年)
大王は十二月十六日国境を越えてシュレージエンに侵入し、二、三要塞を除きたちまち全シュレージエンを占領し、一月末国境に監視兵を配置して冬営に入った。
バイエルン侯がフランスの援助に依りドイツ皇帝の帝位を争い、墺国と交戦状態に在ったため、大王は墺国は自分に対して充分なる兵力を使用することが出来ないだろうと考えていたのに、一七四一年四月初め突如墺軍が国境を越えて攻撃し来たり、大王の軍は冬営中を急襲せらるるに至った。普(プロイセン)軍は狼狽して集結を図り、四月十日モルウィッツ附近に於て会戦を交え普軍は辛うじて勝利を得た。墺軍はナイセ要塞に後退し、爾後両軍相対峙する事となった。
[#底本177頁に地図あり]
大王と墺軍の間には複雑怪奇の外交的躯引が行なわれ、墺軍は
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