の図がある]
 四年半は三十年戦争や七年戦争に比べて短いようでありますが緊張が違う。昔の戦争は三十年戦争などと申しましても中間に長い休みがあります。七年戦争でも、冬になれば傭兵を永く寒い所に置くと皆逃げてしまいますから、お互に休むのです。ところが第一次欧州戦争には徹底した緊張が四年半も続きました。
 なぜ持久戦争になったかと申しますと、第一に兵器が非常に進歩しました。殊に自動火器――機関銃は極めて防禦に適当な兵器であります。だからして簡単には正面が抜けない。第二にフランス革命の頃は、国民皆兵でも兵数は大して多くなかったのですが、第一次欧州戦争では、健康な男は全部、戦争に出る。歴史で未だかつてなかったところの大兵力となったのです。それで正面が抜けない。さればと言って敵の背後に迂回しようとすると、戦線は兵力の増加によってスイスから北海までのびているので迂回することもできない。突破もできなければ迂回もできない。それで持久戦争になったのであります。
 フランス革命のときは社会の革命が戦術に変化を及ばして、戦争の性質が持久戦争から決戦戦争になったのでしたが、第一次欧州大戦では兵器の進歩と兵力の増
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