、軍隊の運動に比し戦場の広き事
決戦戦争の名手ナポレオンもロシヤに対しては遂に決戦戦争を強いる事が出来なかった。露国が偉いのではない。国が広いためである。ナポレオンは決戦戦争の名手で数回の戦争に赫々たる戦果を挙げ全欧州大陸を風靡したが、海を隔てたしかも僅か三十里のドーバー海峡のため英国との戦争は十年余の持久戦争となったのである。但しこれはむしろ2項の原因となるべき点が多いが、その何れにしろ、日本はソ連に対しては決戦戦争の可能性が甚だ乏しい。
広大なるアジアの諸国間に欧州に於けるように決戦戦争の可能性の少なかった事はアジアの民族性にも相当の影響を与えたものと私は信ずるものである。
以上の原因の中3項は時代性と見るべきでない。ただし時代の進歩とともに決戦戦争可能の範囲が逐次拡大せらるる事は当然であり、前述の如く一根拠地の武力が全世界を制圧し得るまでに文明の進歩せる時、すなわち世界統一の可能性が生ずる時である。
1項は一般文化と密に関係があり、2項は主として武器、築城に依って制約せらるる問題であって、歴史的時代性とやはり密な関係がある。
以上綜合的に考える時は決戦戦争、持久戦争必ず
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