たらしむべきものではない。
 戦争についてもその最も重大なる事すなわち「戦」の人生に於ける地位に関して王道文明の示すところは、私の知っている範囲では次のようなものである。
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1 三種神器に於ける剣。
 国体を擁護し皇運を扶翼《ふよく》し奉る力、日本の武である。
2 「善男子正法を護持せん者は五戒を受けず威儀を修せずして刀剣|弓箭鉾槊《きゅうせんぼうさく》を持すべし。」
  「五戒を受持せん者あらば名づけて大乗の人となすことを得ず。五戒を受けざれども正法を護るをもって乃ち大乗と名づく。正法を護る者は正に刀剣器杖を執持すべし。」(涅槃経)
3 「兵法|剣形《けんぎょう》の大事もこの妙法より出たり。」(日蓮聖人)
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 このような考え方は西洋にあるか無いかは知らないが、よしんばあっても今日の彼らの文明に対しては恐らく無力であろう。戦争の本義はどこまでも王道文明の指南に俟《ま》つべきである。しかし戦争の実行は主として力の問題であり、覇道文明の発達せる西洋が本場となったのは当然である。
 近時の日本人は全力を傾注して西洋文明を学び取
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