ず全人類の希望が達成せられるべきを信ずる。固より人類の闘争本能を無くすることは不可能であるから、この希望は世界の統一に依ってのみ達成せらるるであろう。最近文明の急速な進歩はその可能を信ぜしむるに至った。
 世界統一の条件として考えられるものは大体次の三つである。
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1 思想信仰の統一。
2 全世界を支配し得る政治力。
3 全人類を生活せしむるに足る物資の充足。
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 心と物は「人」に於て渾然一体である。その正しき調和を無視して一方に偏重し、いわゆる唯心とか唯物とかいう事はむずかしい理屈の分からぬ私どもにも一方的理屈である事が明らかである。しかし心と物は平等の結合ではなく、どこまでも心が主であり物が従である。思想や信仰の観念的力をもってして人類の戦争を絶滅する事が不可能である事は数千年の歴史の証明するところであるが、戦争の絶滅に思想信仰の統一が絶対に必要であり、しかもそれが最も根本的の問題である事は疑うべからざるところである。
 ただしこの統一も単なる観念の論議のみでは恐らく至難で、現実の諸問題の進展と理論の進歩の間には微妙
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