ょうど明治維新時代がそれであります。第一次欧州大戦によって決戦戦争から持久戦争、散兵戦術から戦闘群の戦術に変化し、今日はフランス革命以後最大の革新時代に入り、現に革新が進行中であります。即ち昭和維新であります。第二次欧州大戦で新しい時代が来たように考える人が多いのですが、私は第一次欧州大戦によって展開された自由主義から統制主義への革新、即ち昭和維新の急進展と見るのであります。
[#底本47頁、左上に図あり]
 昭和維新は日本だけの問題ではありません。本当に東亜の諸民族の力を総合的に発揮して、西洋文明の代表者と決勝戦を交える準備を完了するのであります。明治維新の眼目が王政復古にあったが如く、廃藩置県にあった如く、昭和維新の政治的眼目は東亜連盟の結成にある。満州事変によってその原則は発見され、今日ようやく国家の方針となろうとしています。
 東亜連盟の結成を中心問題とする昭和維新のためには二つのことが大事であります(四七頁の図参照)。第一は東洋民族の新しい道徳の創造であります。ちょうど、われわれが明治維新で藩侯に対する忠誠から天皇に対する忠誠に立ち返った如く、東亜連盟を結成するためには民族の闘争、東亜諸国の対立から民族の協和、東亜の諸国家の本当の結合という新しい道徳を生み出して行かなければならないのであります。その中核の問題は満州建国の精神である民族協和の実現にあります。この精神、この気持が最も大切であります。第二に、われわれの相手になるものに劣らぬ物質力を作り上げなければならないのです。この立ち後れた東亜がヨーロッパまたは米州の生産力以上の生産力を持たなければならない。
 以上の見地からすれば、現代の国策は東亜連盟の結成と生産力大拡充という二つが重要な問題をなしております。科学文明の後進者であるわれわれが、この偉大な生産力の大拡充を強行するためには、普通の通り一遍の方式ではダメです。何とかして西洋人の及ばぬ大きな産業能力を発揮しなければならないのであります。
 このごろ亀井貫一郎氏の『ナチス国防経済論』という書物を読んで非常に心を打たれました。ドイツは原料が足りない。ドイツがベルサイユ体制でいじめられて、いじめ抜かれたことが、ドイツを本当に奮発させまして、二十年この方、特に十年この方、ドイツには第二産業革命が発生していると言うのです。
 私には、よくは理屈が判りませんが
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