漢人の一員たる気持であらねばならぬ。皇帝が日系軍官の名称を止めよと仰せられた御趣旨もここにあると拝察する。諸民族混住の国に於て官吏は日系、満系、朝鮮系等のあるは自然であるが、軍隊は各民族軍隊を造るのであるから、漢民族の軍隊の中に「日系軍官」なる名称の有せらるるは適当でない。
田舎の満州人警察の中に少数の日系警官を入れて指導する考えらしいが、この日系警官が満州国不安の一大原因となっているのは深く反省せねばならぬ。他民族の心理は内地から出稼ぎに来た人々に簡単に理解せられない。警官には他民族の観察はほとんど不可能であり、また満州人警官の取締りも適切を欠く。
満州国内匪賊の討伐は実験の結果に依ると、日本軍を用うるは決して適当でない。匪賊と良民の区別が困難であり、各種の誤解を生じ治安を悪化する虞が大きい。満州国の治安は実に満州軍が主として匪賊討伐にあたるようになってから急速に良くなったのである。満州国内の治安は先ず主として満州軍これにあたり、逐次警察に移し、満州軍は国防軍に編制するようにすべきである。国兵法の採用により画期的進歩を期待したい。
有事の日は、日本陸軍の主力は満州国を基地として作戦する事自明であるが、その厖大な作戦資材、特に弾薬、爆薬、燃料等は満州国で補給し得るようにせねばならない。満州国経済建設はこれを目途としている事と信ぜられるが、その急速なる成功を祈念する。
糧秣その他作戦軍の給養を良好にするため北満の開発が大切であり、北辺工作はその目的が多分に加味されている事は勿論である。しかし日本軍自体もこの点については更に更に明確な自覚を必要とする。ソ連が五個師団増加せば我もまた五個師団、十個師団を持って来れば我もまた十個師団を進めねばならない。それには迅速に兵営等の建築が必要だが、今日までの如き立派なものでは到底間に合わない。
幸い青少年義勇軍の古賀氏の建築研究は着々進んでいるから、これを採用すれば必ず軍の要求に合し得るものと信ずる。浮世が恋しい人々は現役を去るが宜しい。昭和維新のため、東亜連盟結成のため、満州国国防完成のため、我らは率先古賀氏のような簡易な建築を自らの手で実行し、自ら耕作しつつ訓練し、北満経営の第一線に立たねばならぬ。
新体制とか昭和維新とか絶叫しながら、内地式生活から蝉脱出来ない帝国軍人は自ら深く反省せねばならぬ。
我ら軍人自ら昭和
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