字下げ、折り返して2字下げ]
1 ソ連の陸上武力。
2 米の海軍力、これには英、ソの海軍が共同すると考えねばならぬ。
[#ここで字下げ終わり]
であるからこれに対し、
[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]
1 ソ連が極東に使用し得る兵力に相当するものを備え、かつ少なくもソ連のバイカル以東に位置するものと同等の兵力を満州、朝鮮に位置せしむ。
2 西太平洋に出現し得べき米、英、ソの海軍力に対し、少なくも同等の海軍力を保持せねばならぬ。
[#ここで字下げ終わり]
陸軍当局の言うところによれば極東ソ軍は三十個師団以上に達し、約三千台の戦車及び飛行機を持っている。それに対する我が在満兵力は甚だしい劣勢ではあるまいか。この不安定が対ソ外交の困難となり、また一面今次事変の有力な動機となった。而して日ソ両国極東兵備の差は僅々数年の間にこんな状態となったのである。全体主義的ソ連の建設と自由主義的日本の建設の能力の差を良く示している。ナチス政権確立以来数年の問に独仏間の軍備の間に生じた差と全く同一種類のものである。我らは一日も速やかに飛躍的兵備増強を断行せねばならぬ。アメリカ最近の海軍大拡張はどうであるか。海相は数は恐るるに足らぬ。独自の兵備によってこれに対抗し、断じて心配ないと言うているし、また一部南進論者は三年後には米国の製艦により彼我海軍力に大きな差を生ずるから今のうちに開戦すべしと論じている。しかし更に根本的の問題は、我らは万難を排してソ連の極東軍備およびアメリカの海軍拡張に対抗せねばならないことになる。ソ連が極東に三十師団を持って来れば我が軍も北満に三十師団を位置せしむべく、ソ連戦車三千台なら我も三千台、また米国が六万屯の戦艦を造るなら我もまたこれと同等の建艦を断行すべきである。
そんな事は無理だと言うであろう。その通り我が国の製鉄能力は今日ソ連の数分の一、米国に比しては更に著しく劣っているのは明らかである。しかし造るべきものは造らねばならぬ。断々乎として造らねばならぬ。この一歩をも譲ることを得ざる国防上の要求が我が経済建設の指標であり昭和維新の原動力である。この気力無き国民は須からく八紘一宇を口にすべからず。
三年後には日米海軍の差が甚だしくなるから、今のうちに米国をやっつけると言う者があるが、米国は充分な力がないのにおめおめ我が海軍と決戦を交うると考うるのか。
前へ
次へ
全160ページ中153ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石原 莞爾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング