間の利害等によりその強化を阻止する作用も依然なかなか強い。結局各集団の状況に応じ落着くべきに落着き、しかも絶えずその統制強化に向って進むものと考えられる。合理的に無理なくその強化が進展し得るものが優者たる資格を得る事となるであろう。
右の如く発展をしながら各集団の間に集散離合が行なわれてその数を減じ、恐らく二個の勢力に分れ、その間の決戦戦争によって世界統一の第一段階に入るものと想像せられる。二個勢力に結成せらるるまでが人類歴史の現段階であり、戦争より見れば第一次欧州戦争以来の持久戦争時代がそれである。持久戦争と言うても局部的には決戦戦争が行なわれて集団結成を促進するのであるが、武力の活動範囲に未だ制限多く自然に数集団となるわけである。今日はこの意味に於て人類の準決勝時代と言うべく、この時代の末期である世界が二個の勢力に結成せられる時、次の決戦戦争の時代に入り最終戦争が行なわれる事となる。
ラテン・アメリカの諸国は人種的にも経済的にも概して合衆国よりも欧州大陸と親善の気持を持っているにも拘らず、第一次欧州大戦以後は急速に米州連合体の成立に向いつつある事は即ち歴史の必然性である。ドイツは天才ヒットラーにより戦争の中に於て着々欧州連盟の結成に努力し、恩威併行の適切なる方策により輝かしき成果を挙げている。ソ連は最もよく結合の実を挙げ、今日は名は連邦であるが既に大国家とも見る事が出来る。日本はその実力によって欧米覇道主義の侵略を排除しつつ、一個の集団へ結成せんとしつつあるが、我が東亜は今日最も不完全な状態にある。しかし遠からず支那事変を解決し、必ずや急速に東亜の大同を実現するであろう。現下の事変はその陣痛である。
これらの未完成の四集団は既にいわゆる民主主義陣営と枢軸陣営の二大分野に分れ、ソ連は巧みにその中間を動いて漁夫の利を占めんとしつつあるが、果してしからばその将来は如何に成り行くであろうか。
今日民主主義、全体主義の二大陣営と言うも必ずしもそれは主義によるのではない。現に民主主義という英、米は全体主義の中国を味方に編入し、殊に全体主義の最先鋒ソ連に秋波を送りつつある。主義よりもむしろ利害関係ないし地理的関係が主である。しかし文明の進展するところ、結局は矢張り主義が中心となって世界が二分するであろうと想像する。
この見地から究極に於て、王覇両文明の争いとなるもの
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